オーデュボンの祈り

オーデュボンの祈り (新潮文庫)

オーデュボンの祈り (新潮文庫)


伊坂幸太郎の著書を初めて読んだ。これまで本屋で見かけたりサイトのインタビューなどを見てポツポツと気になっていたので、いつか読むことになる運命なのだろうなぁと漠然と考えていたが、ついに読んだ。そして脱帽。少なくとも文庫は買いあさること必至だ。
変な話ではある。登場人物も設定も変だ。忘れられた島に住む、嘘しか言わない元画家や殺人を許される男など、登場人物の誰もがなんらかのデフォルメをされているのだ。そして極めつけは、未来を見通し人間と会話するカカシ。
その、奇をてらってとりあえず変なものを並べました、というように見えてしまうものでも、魅力的に描かれて最終的に美しく収束するのならば、それはやはり一級の物語なのだと思う。
物語の終盤にかけて、奇抜だと思っていた人々の行動が奇抜なまま一連の流れに収まってゆく。まるでパズルを解くように、始めは少しずつ、やがて一気に収まってゆくスピード感は体感としてかなり高速で興奮した。そして全てがきちんと収まったときのカタルシス。脳がじんわりとしびれるほどの心地よさ。
伊坂幸太郎、恐るべし。