文章ってやつは

<不良>のための文章術 (NHKブックス)

<不良>のための文章術 (NHKブックス)


凝り性なのかなんなのか。一円にもならないとはいえ、文章をこれだけ書いていると、何らかの形でステップアップしたくなる。実際に上手くならなくても、その気にさえなれればいい程度だが、書き続ければそれなりに上手くなるという暗示はそろそろ効かなくなってきた。もちろん、正しいとか文法とかいうことではなく、面白いとか読みやすいとかいうことで、の話だ。
この本で言う「〈不良〉のため」というのは、高校時代に勉強もせずに遊び回った人のためという意味ではなく、優等生ではない人という意味だ。優等生の文章はテストで点を取るためのもので、ライターとしてお金をもらう文章とは根本的に違うということ。ライターになる気はないけれど、イイ子ちゃんでも悪い子ちゃんでもなく、読みたいと思ってもらえてナンボという割り切りとサービス精神の文章術なら読んでみようかと思った。iBookのインストールで無駄に暇があったのもあり、ほぼ一気に読み切ってしまった。
内容はさながら実戦形式の授業のように、具体的で現実的な例文を多用して、解説して直しながら修正後と見比べる形で進む。参考書ではなく授業のようだと思うのは、ポイントごとに箇条書きされるのではなく、つながった文章で解説されているからだ。文章術の本なのだから、教えている側の文章がすぐれていることを表明しなければならないので、当然と言えば当然の形である。
資料にあたる方法も詳しい。未知の分野をつかむには、まず新書を買って読む。新書はおおまかにつかむのに適しているし、参考文献がしっかり書かれている場合が多いので、そこから得た情報で図書館などを使うのだそうだ。新書店、古書店、新古書店の使い分けなど、論理的で無駄のない活用方法が続く。
一度直したものをさらにみがいたり、素人目には使えない例だとは思えないような文章も修正されている。いちいち納得して読みながら、過去の自分の文章を振り返って少しヘコむ。この書評もどきを書きながらも、自分が駄目な例にあたる文章を書いているのではないかと思ったりもするという、パラドックス病になったりもする。どうやらかなり影響されているようだ。
一応この本に書いてあることに従って書いてみてはいるのだが、そのうち元のテキトーな文章に戻るだろうとは思う。でも、どこかに必ず影響されている部分が残るのだと思う。