なぜ書くのか

●なんだか腹が立った
僕がなぜPalmに関するコラムを書き始めたのかというと、マイクロソフトのサイトにあるPocketPCPalmの比較表を見たからであった。
自社の製品の素晴らしさを宣伝するのは、いくらやってもいいと思う。だけど、競合製品の揚げ足取りはいただけない。しかも、Palmの良いところを、まるでそこが悪いところなのだと言うかのように書いてある。パワーユーザー以外は死ねと言われているようで、なんだか腹が立ったのだ。
Palmに本当に力がないのなら、自然淘汰されて消えていくのは仕方のないことだ。だけど、Palmは過剰戦争でわけのわからなくなってしまったOSの世界に一筋の光りを当てたと思う。軽くてもいいんだ、使わない機能はやっぱりいらないんだ、ローパワーマシンでも自分に能力さえあれば仕事はできるんだ。そろそろそういう時代になってきたのだ。それはエコロジーでありグローバルでもある。そういう意味で言えば、PalmOSはWindowsより遥かに進化している


●とりあえず道具ということで
僕がPalmを道具だと言い張るのは、まず道具なのだという感覚が大事だと思うからだ。それを浸透させないと、不当な理由でPalmが悪く言われてしまうと思うのだ。せっかく低価格低コストできびきびと動くOSが伸びそうなときに、音楽聞けないんじゃいらないとか言われると反論する気も起きない。誰かにMP3聞けるいいマシンないかと聞かれたら、僕は普通のMP3プレイヤーかほかのハンドヘルドマシンを勧めるだろう。
PocketPCは小型化のためにパソコンの機能を後退させたものだが、Palmは始めから違う路線でPDAというものを発展させたのだ。その違いを明確にしたい。両方持っていて使い分けることも可能なのだから。Palmには今後も流されることなく、できればゆっくりと登山で最後尾の人のペースにあわせるように、みんなが慣れたころに次のステップに進んでいくという方法をとって欲しい。おそらくこれは全速力でつっ走ることを期待されているマイクロソフトにはできないことだ。


●日本という市場
そして今僕が一番恐れているのが、日本という市場である。PocketPCに日本の大手メーカーがぞくぞく参入してしまった。これから組織票で無理矢理当選する議員のように、企業を中心にパワープレイでどんどん売りだすのだろう。ここでPalmはどうするか。僕だったらさっさと日本市場を切り捨てる。物の価値を正確に判断せずに、売れてるものとか新しいものに群がるハイパワー至上主義の市場にはPalmを投入する意味がないと思うからだ。理解もされない狭い地域で、マイクロソフトを相手にして、わざわざ日本語版を開発してまで戦う意味はない。だったら、英語版のままで売れるシンガポールなどに新しい市場を求めたほうがいい。
日本には神様を始めとする素晴らしいユーザーがいることをPalm社が知っていること。数々のすぐれたPalmウエア作家がいること。SONYが頑張っていること。これらが希望である。しかし、マイクロソフトに狙われた会社が、理解されがたいシンプルマシンでどこまで日本市場に居続けられるのか心配で仕方ない。シンプルということをやめてまで日本で売れるものを作ることは、PalmOSを自ら否定することにつながってしまう。Handspring社が日本では最新機種を販売しなかったり、異常に安売りするということも、引き上げる前の売り切りに見えて仕方がないのだ。


●バランスをとっている
だから僕はPalmを道具と断定したコラムを書き続ける。音楽が聴けたりCPUが速いという解りやすいメリットは、金もうけしたいメーカーがいくらでも言っている。というか言われなくてもみんな知っている。マイクロソフトはそこで戦っているが、Palmは違う所で戦っていると思う。その違いを明確にしたいがために、キーボードを叩いているのだ。
同じようなことを何度も書いているが、両方あって欲しいのだ。ハイパワーなPocketPCも、数字上ではローパワーだが使用感はハイパワーなPalmも。何も考えずに数字だけ見ればPocketPCしか売れないかもしれない。それが嫌なのだ。僕がPalmの優れた点だけを書いているのは、僕の中でバランスをとっているからである。これだけPalmに傾倒してはじめて、マイクロソフトPalmを平等に見ることができると思うのだ。
もしもマイクロソフトがシンプルで起動も速い素晴らしいOSで正々堂々と勝負してきたら、僕はさっさとこのサイトを閉じてマイクロソフトに乗り換えるかもしれないと思っている。しかしやはりマイクロソフトには、技術革新のためにもこのままハイパワーマシンのためのOSを作ってもらいたい。そして将来的に、価格が安くてデータに互換性があり、やりとりが手軽にできるのならば、両方を買って状況に応じて使い分けたいと思っている。そのためには両方が潰しあうことなくその特性を伸ばしてもらわなければならない。それにはまずPalmが、ローパワーでもしっかりとした仕事ができるOSが定着することが大事なのだ。その日のために僕は今日もキーボードを打っている。過熱しすぎないように、冷静なふりをしながら。