DOCで読んだもの No.0006

おいしいコーヒーのいれ方
著者:村山由佳
形式:ドットブック

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僕はメグ・ライアンが好きである。誰が何と言おうと大好きである。僕の中でメグ・ライアンと面影が似ている女優として中澤裕子中島みゆきをあげておこう。女優なのかどうかはこの際置いておく。かつて共感してくれたひとは一人もいなかったとしても、あえて言い切っておこう。
最近気づいたのだが、僕は誰かに似ていると判断するときに、似顔絵を描くときにポイントとするパーツというポイントで似ているかどうかを判断するようである。ざっくばらんに面影と言ってもいい。たとえば、自分に似ている芸能人を二人あげたとして、その芸能人同士が似ていない場合というのがある。そのときの自分というものが似顔絵なのである。つまりワンクッションおくと似ていると思って似ているというのであるが、そのワンクッションは僕にしか見えていないので似ていないといわれてしまうのである。というか、脱線しすぎた。
さて、僕はわりとど真ん中ストレートが好きである。ひねったのも好きだが、ストレートが好きなのである。最近の物語は変化球を多用しすぎて暴投している気がするのである。だったらど真ん中ストレートで勝負したほうが心地よい。というか、少なくてもいいから直球勝負するやつがそこそこ勝負できてもいいじゃないかと思う。
歌もドラマも恋愛が多めなこの国で、大人になっちまうと真っ正面からくる甘酸っぱい恋愛物語を真っ正面で受け止めるにはなかなかに気合いがいるわけで。メグ・ライアンのラブコメが好きなのも、外人だということでファンタジーとして見れるからかもしれない。だけど、ファンタジーはどうしたってファンタジーなので、素敵なのねぇと思うけれど、実感としてグサリと心に刺さることはあまりない。
やはり日本人が主役じゃないと。しかも、相手も日本人で、脇役も日本人で、舞台も日本で。ただ、あだち充以降のラブコメの王道として、やや無理矢理なありそうでなさそうなシチュエーションはあってもいい。そして「おいしいコーヒーのいれ方」につながるのである。
父の転勤で従姉弟と同居することになった高校生の主人公は、ひさしぶりに会った従姉弟の姉の方のあまりの綺麗っぷりに惚れてしまう。しかもその人は主人公の高校の美術の先生になっちゃったりするのである。すげー都合。すげー強引。なにしろ一緒に住んでいるので、当然彼女がシャワーに入っているときに停電が起きてひともんちゃくあったりと、まさにど真ん中、王道なのである。
王道のラブコメであるから、当然主役の二人は好き合っているのである。そんなことは大前提なのである。なのにくっつかないから読んでいるこっちとしてはヤキモキするのである。時折、別の人が好きなんじゃないかと思わされたりするのである。いっそ主人公と一緒にハラハラしたりするのである。なにより、女の方が臆病だったりして、やらなくてもいいことをやったりして、よけいに話が遠回りするのである。文句なし、王道中の王道である。そして、なんとこの物語、紙の書籍ではすでに7巻まで出ている。単発ではないのである。王道もそこまで続けば本物だろう。もちろん、王道を行くためには隠し味としてのサブストーリーも欠かせない。そのあたりもバッチリである。メインの味を損なうことなく、より深みのあるコクを出している。だからこそ、読み切れたのだと思う。
この物語はしばらく一巻だけが電子書籍化されていたのだけれど、作者さんがなにやら賞を取ったからなのか、二巻三巻が続々登場している。ただ、真っ正面からくる甘酸っぱい恋愛物語を真っ正面で受け止めるには、なかなかに勇気がいるので、まだしばらくは読めないだろう。だけれども、いつか続きを読める日が来たらすぐに読めるように、買うだけ買って置いておいてもいいかなとは思うけれども。