情報の流用

 ソフトのことを考えるとき、僕はいつも情報の流用ということを考えます。一を聞いて十を知るというようなことを機械にやらせるということです。
 例えばスケジュールに「○○会社で打ちあわせ」と書くと○○会社の電話番号が自動的にくっついたりするようなことです。関連資料を勝手に集めるということですね。これはまさにアシストだと思います。
 使用頻度の多いアプリをランチャーの手近なところに移動しておくというのもそうです。持ち主が頻繁に起動するならば、それはすぐに使うものだということですね。
 持ち主の個人情報を流用するというのが、実はその持ち主が一番嬉しいことだと思うのです。個人情報を流用というと、すぐにダーティなイメージを浮かべがちですが、そんなに難しいことではありません。誕生日におめでとうと言ういう些細なことも、個人の情報を流用している会話なのです。
 例えばPalmの場合だと、ハードボタンというのがあります。これは数も位置も全て共通なものです。このボタンを押す頻度や、割り当てているアプリでも、持ち主の性格が見えてくるでしょう。それを記憶しておいて何かに使えないかなぁと、最近はよく考えています。その他にもPalmを持っている人が頻繁に行う行為、HotSyncだとかデータを消すとか、メモの総数とか一日の起動時間とか、もういくらでも流用できる情報を持っていると思うわけです。
 その情報をどうするかというのが難しいのですが。例えば育てゲー。デジタルペットです。このペットのえさを、開かれたDOCファイルの個数とリンクさせるというのはどうでしょう。つまり、持ち主がどれだけ情報を読んだかということとペットの栄養面がリンクするわけです。ペットが太れば持ち主の知識も増えたというようなことになります。もしくはハードボタンにペット一匹を割り当て、そのハードボタンが押された回数でペットが成長するわけです。自分がどのボタンを頻繁に押すのか、それはハードボタンの磨耗を示すことにもなります。まぁこれは単なる遊びですが、個人用にカスタマイズされた人工知能のミニチュアモデルという大げさな名前でいうとそれらしく聞こえたりします。
 持ち主の行動を記憶し、その行動を数値にかえて利用したり、その行動パターンから次の行動を予測してみたり。さらに、取得したデータをデータベースにして、他のソフトと共有してくれたりすると、もう言うことはありません。一番僕のことを知ってくれている友達みたいな存在にPDAにはなって欲しいのです。それにはこのポケットサイズの小ささがいいと思います。パソコンはあまりにネットワークにつながりすぎていて、公的なイメージがついてしまいました。もっと私的な、個人に傾倒しまくっているデバイスが最適だと思うのです。