ゲームの秋に読むDOC

 たとえば僕の書く文章は、それなりに僕の味付けをしている。いわば僕だけの文章といいたいくらいなもんである。しかし、当り前だけど、もとをただせばどこかで誰かの文章の影響を受けているというのは間違いない。それは、例えば小説だったり、ドラマの言い回しだったりである。そしてもちろん、WEB上のコラムも忘れてはいけない。
 自己分析では恥ずかしがり屋で天の邪鬼だと思っている僕は、かなり頑張らないと真面目な文章が書けない。いっそ真面目な文章をアップするときは自分で自分に罰ゲームさせてるんじゃないかと思う時すらある。一人SMである。しかしそうでもしないと、どこかで何か狙っておこうとかつい考えてしまうのだ。狙うのをやめれば勝手に思いついたりもするのだ。また、そういう文書を読むのが好きなのだから仕方がない。
 最近はちょっとパブリックな匂いを好むようになってきた僕である。要するに金もらって締切に追われて書いたものを読みたいのである。もちろん無料で。今まではかなりあらゆる意味でフリーな文章を読みあさってきたので、そろそろ別の味を楽しみたくなったのだと思う。もちろんいずれ荒唐無稽を求めてあらゆる意味でフリーな文章を読みあさる日はやってくるだろう。しかし、とにかく今はパブリックなのである。公なのである。
 最近特にお気に入りなのが永田泰大という人物の書く文章である。永田泰大と聞いてピンとくる人はあまりいないのではないだろうか。なにしろ僕ですらここに書くためにさっき知ったばかりなのだ。いや、当然何百という彼の文章を読んでいるのだから知ってはいたのだが、なにしろ本文に夢中になるあまり名前は目に入っても読んではいなかったのである。まぁ、それはある意味で仕方ないのかもしれない。なぜなら彼は自分の名前でサイトを立ち上げているわけでもないし、作家としてデビューしているわけでもない。何というか要するに社員なのである。
 ファミ通という雑誌をご存知だろうか。僕の年代ならば一度は読んだことのある、かなり有名なゲーム雑誌である。永田氏はその雑誌の……何をしている人なのかは知らない。記事は書いているのではないだろうか。とにかく何らかに関わっている人である。ここ数年ファミ通はコンビニで表紙をチラ見するだけなので、はたして永田氏がどれくらいすごいのか、もしくはどれくらいすごくないのかを僕は知らない。ただ、彼の書く文章は面白い。僕にはそれだけで充分だった。
 出会いはファイナルファンタジーXIである。漠然とネットワークRPGにあこがれを持っていた僕は、ある日情報を集めようとグーグルで検索をかけたのだ。そしてみつけたのがファミ通.comで連載されていた「『ファイナルファンタジーXI』プレイ日記」であった。
 といってもネタバレしているわけではない。ゲームをプレイしている中で出会った素敵なプレイヤーや、感動した事などを綴っているだけの連載である。しかし、そこにはなんというか愛がある。まるで良くできたロードムービーのように、出会いと分かれを繰り返すファイナルファンタジーXIの世界を、とても好意的なものだと感じることができる。もちろん、何万という人間が集まれば、嫌なやつというのは必ずいる。しかし、それでもその世界で遊んでみたいという気にさせてくれる、すばらしい文章だと思う。
 ちょっと調子に乗ってみたり、落ち込んでみたり。そんな日常がそこには広がっている。でも、誰かが少しだけ優しかったり、知らない人が親切だったりもする。そして期待感でワクワクさせてくれる。あぁ、この人はゲームが好きなんだなぁという愛を感じながら、ちょっとニヤけてしまう文章。読書の秋、ゲームの秋には最適な読み物ではないだろうかと思う。
ファイナルファンタジーXI』プレイ日記(ファミ通.com)⇒http://www.famitsu.com/game/column/nagata_ff11/index.html
永田氏の書いたもう一つのRPGの世界
ドラゴンクエストVIIエデンの戦士たち〜』編 永田泰大バージョン⇒http://www.famitsu.com/game/column/dq7_naga.html
ファイナルファンタジーXIについて別角度から
ファイナルファンタジーXI」の驚くべき世界(ASAHIパソコン NEWS)⇒http://www.asahi.com/tech/ff/index.html